食品商社がメーカーとして商品開発?
「ライフスタイル」に寄り添うVOXSPICE。

  • 香辛事業部
  • VOXSPICE

INTRODUCTION

食品商社であるヴォークス・トレーディングが、自社ブランドとして展開する「VOXSPICE(ヴォークススパイス)」。2004年に誕生し、2012年のブランドリニューアルを経て、今ではキッチンや食卓を彩る商品として多くのファンに愛されています。
今回はブランド開発に携わったT.I.さん、リニューアル後の営業・調達を担当したC.K.さんのお二人に、VOXSPICEの歩みについてうかがいました。

PROFILE

  • 香辛料部 部長 T.I.の画像

    香辛料部 部長

    T.I.

    2008年にヴォークス・トレーディングへ入社し、VOXSPICEをはじめとしたオーガニック商品の開発や営業を担当。2016年からはジェネラルスパイス、2022年からはマスタード・からしの担当として、産地からの原料調達や営業活動に携わる。

  • 香辛事業業務部 副部長 C.K.の画像

    香辛事業業務部 副部長

    C.K.

    2001年にユアサ商事に入社し、2002年にヴォークス・トレーディング設立とともに同社に転籍。翌年にはタイの現地法人に出向し、加工用原料の管理を担当。帰任後の2011年からはVOXSPICEをはじめ、オーガニックスパイス・ハーブの調達、営業活動に携わる。

「BtoB向けのオーガニック商材」が、「BtoC向けの『VOXSPICE』」に

さまざまな食品を取り扱うヴォークス・トレーディングですが、どのようなきっかけでオーガニックスパイスやハーブを展開するに至ったのでしょうか。

T.I.
VOXSPICEの開発は、2006年に施行された残留農薬のポジティブリスト制度がきっかけです。これは、食品の中に残留する農薬が一定の量を超えた場合にその販売を原則禁止するというもの。当社でもこの制度に対応するため、既存の調達ルートを生かしながら、栽培・加工の工程で化学農薬や化学肥料を使用しないオーガニックスパイス・ハーブを展開することとなりました。これらの商品は当初BtoB(企業向け)用原料として扱っていましたが、価格が高いことや、加工・製造の段階で非オーガニック食品が加わるとメリットが失われてしまうことから、既存顧客にはなかなか受け入れられず……。そんな逆境から始まりました。

現在、VOXSPICEはBtoC(消費者向け)の商品として販売されています。BtoBからBtoCへの転換はどのようにして行われたのですか?

T.I.
当時、日本国内ではオーガニック食品が今ほど認知されていませんでした。ですが、定期的に生産国へ赴き、オーガニックスパイスやハーブ生産者とのつながりが広がるにつれ、世界のマーケットが拡大していることを実感したんです。そして、この波はいずれ日本にもやって来るだろうと考え、調達したオーガニックスパイス・ハーブを「VOXSPICE」として消費者向けにも販売することを決めました。また、VOXSPICEはこれまでの商材とはターゲットや販売方法が異なるため、営業もこれまでとは違うアプローチが必要でした。「アースデイ」など地球環境について世界中の人々が考えるイベントに参加したり、スパイス・ハーブの産地情報を共有するセミナーを実施したり……。当時の日本市場では消費者に馴染みのない商品だったからこそ、「コト消費」を意識した販促活動を行いました。

その後、VOXSPICEは2012年にブランドリニューアルを行っています。これにはどのような経緯があったのでしょうか。

T.I.
市場の拡大を確信していましたし、ポテンシャルがある商品だと考えていたのですが、実は発売後思ったように数字が伸びなかったんです。我々はVOXSPICEに足りないものは何かを考え、それは「商品を手に取るときのワクワク感」だと結論づけました。また、当時は海外の食品セレクトショップやカフェが次々と日本に上陸し、感度の高いお客さまも増えている最中。そこで、VOXSPICEもコンセプトやパッケージを一新することで、より多くの方に商品を届けられると考えました。
C.K.
私はリニューアル直後からVOXSPICEの調達・営業に携わっていますが、このリニューアルは「ライフスタイル商品」をコンセプトに各施策を進めていましたよね。
T.I.
はい。外部専門家のご協力を仰ぎながら、「どんな店に置いてほしいのか」「どんな見た目ならさまざまな方が使いたくなるのか」を再定義し、今のVOXSPICEを形づくっていきました。

リニューアル後は、これまでとは違う店舗にもアプローチしたと聞いています。

T.I.
そうなんです。売り先に関しては、スーパーに加え雑貨店もターゲットに加えました。これに伴い、パッケージのデザインにも「生活雑貨として手元に置いておきたい」「キッチンを彩りたい」という需要に応えられるよう、華やかさをプラス。社内のメンバーの発言を外部専門家の方が上手く汲み取ってくださり、我々が思い描いていた通りのVOXSPICEを展開することができました。
C.K.
コンセプトやパッケージに関しては、ギフト需要も見込んでいます。贈り物の選択肢に「VOXSPICE」を入れていただけるよう、貰う人はもちろん、あげる人にも喜んでもらえるようなデザインにしたいという想いでリニューアルを進めました。

認知拡大に向けた施策を重ね、より良い品をより多くの消費者へ

リニューアル後の様子はいかがでしたか。

C.K.
それが、あまり反響がなく……(笑)。ターゲットは確かに拡大したものの、特に雑貨店への営業となると社内に知見がなく、とにかく手探りで拡販に務めました。また、雑貨店は商品の入れ替えが少なく、アイテム数やロット数もこれまでの売り先とは違う角度で検討しなければなりませんでした。私自身もこの頃から営業に携わり始めたため、スパイスやハーブについて学びを深めながら、地道に、少しずつ商談を重ねていきました。

これまでと同様に、展示会やセミナーにも参加していたんですか?

C.K.
はい。当社は一度に多量を取引できる「バルクスパイス」も扱っているので、こちらがメインの展示会に新商品としてVOXSPICEを持ち込むこともありました。こうしたなか、とある展示会で大きな転機が訪れたんです。それは、某高級スーパーのバイヤーの方に声をかけていただいたこと。その方は高品質なオーガニックスパイスを取り扱いたいと考えていたそうで、商談の末、全国の店舗で数種類のスパイスとハーブを展開していただけることになりました。とは言え、陳列できる面積は限られています。そこで、より多くのお客さまにVOXSPICEを見つけてもらえるよう、袋の仕様を壁掛け用に急遽変更するなど、最後まで調整を重ねました。その結果、販売開始後は、こちらの想像以上にブランド認知が拡大しましたね。以降、高級スーパーの他、ライフスタイルショップやキッチン雑貨店、さらにはアパレルショップとのお取引が急増しました。取扱店も都内から全国へと波及しており、当初私たちが思い描いていた「日々の生活を彩る存在」として、新しいお客さまの元へ届いている手応えを感じています。
T.I.
展示会への参加だけでなく、セミナーも積極的に開催しています。こちらは一方的な講演形式ではなく、「スパイス・ハーブを楽しく使いこなす勉強会」として、和やかな雰囲気で実施することが多いですね。また、セミナーでは商品をより身近に感じていただけるよう、産地の情報や生産者の想いを「料理のバックストーリー」としてお伝えしています。最近では、インドカレーの先生をお呼びして、スパイスの勉強会とVOXSPICEを使用したカレーづくりを実施しました。反対に料理教室に当社の社員が赴き、産地や生産者についてお話しすることもあります。
C.K.
展示会とセミナーに共通して言えるのですが、消費者の方に直接商品の魅力をお伝えできたり、反応をいただけたりするのは、VOXSPICEに携わっているからこそ感じられるやりがいです。

VOXSPICEは見た目はもちろん、品質にもこだわりを持たれていますよね。

C.K.
もちろんです。生産者の方が一生懸命に育て加工した大切な商品を、お客さまにきちんとお届けするのが私たちの使命です。なかには天候により生育状況が芳しくなかったり、平時より品質が低いものが多かったりする年もありますが、その際も品質を落とさないよう、常にグレードの高い原料のみを買い付けるようにしています。またスパイス・ハーブは加工度が低いため、一般的には異物が混入しやすいと言われています。その点も管理体制が万全な生産者から厳選した原料を輸入し、日本国内でも有機認証を取得している選別業者さんで異物除去選別を実施していただくことで、異物を限りなくゼロに近づけています。

品質の良さは、お客さまの反応からも感じられますか。

C.K.
そうですね。特に長くご愛用いただいている方には、「VOXSPICEは香りも良くおいしい」「他のスパイスやハーブに戻れない」というお声をいただくことが多いです。これも、品質にこだわりを持つサプライヤーの皆さまと、長くお取引いただけているからこそだと思います。
T.I.
リニューアル前後でVOXSPICEの展開方法は大きく変わりましたが、リニューアル前からご愛用いただいている皆さまは、今でもお買い求め続けてくださっています。手前味噌ですが、VOXSPICEの品質の良さが表れているエピソードだと感じています。

市場が拡大し始めたこの数年を、さらなる跳躍のバネに

近年ではコンビニエンスストアでも本格的な多国籍料理が発売されています。立ち上げ時と比べて、スパイスやハーブが日本国内に普及している実感はありますか?

C.K.
徐々に普及している実感はあります。特にコロナ禍をきっかけにご自宅で料理をする方が増え、そこからようやくスパイスやハーブが多くの方にご購入いただけるようになりました。
T.I.
そうですね。ただ、各家庭単位で見ると、オーガニックに限らず「スパイスやハーブの使い方がわからない」というお声は依然として多いですね。これは、スパイス業界が長年抱えている課題でもありますが、まだまだ普及の余地は大きいとも言えます。
C.K.
だからこそ、今後はSNSやECも活用しながら、「実は気軽に使える調味料なんだ」ということをさらに多くの方へ伝え、市場を広げていきたいと考えています。

お二人のお気に入りの商品や、おすすめの使い方などがあれば教えてください。

C.K.
迷うところですが……特に、見た目の美しさにこだわったピンクペパーとカルダモンは自慢の商品です。また、日常で使い勝手が良いと感じているのはシナモンで、毎朝のコーヒーに入れています。あとはホワイトペパーパウダーも香りがよく、日々の料理の必需品ですね。ローレルやローズマリーも白湯に入れて、気軽にスパイスやハーブの香りを楽しんでいます。すみません。ひとつに絞れませんでした(笑)。
T.I.
私はブラックペパーとバニラビーンズがお気に入りです。ブラックペパーは力強い味と香りが特徴で、展示会で試食していただくと額から汗が出る人がいるほど。スパイスに興味を持っていただくためのフックになる商品です。バニラビーンズはプライベートで愛用していて、周囲にも冷蔵庫に1本入れておくことをおすすめしています(笑)。パンケーキやホットミルクなど、普段の料理に少し入れてあげるだけで、幸せな香りが漂います。一緒にいる人の幸せを願うときに活用できるスパイスですね。また、最近プッシュしているのはソルティグリーンペパーです。ブラックペパーになる前の胡椒を収穫し、すぐにお湯で茹で、塩水に浸けて乾燥させるという特殊な製法で作っています。製造過程では当社グループの技術力も存分に生かしており、当社にしか生み出せないスパイスだと感じています。

スパイス・ハーブ愛にあふれたご回答をありがとうございます。最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

C.K.
供給量が少ないオーガニックスパイスやハーブを安定的に調達することは難しいですが、その反面、世界各国の価値ある商品、また生産者の想いや愛情を「VOXSPICE」という形で消費者の方々に届けられることは、チームの誇りであり喜びです。また、国内の製造関係者の皆さまにも多大なご尽力をいただいていることに、改めて感謝申し上げます。今回は歴史を中心にお話ししましたが、VOXSPICEは今後もさまざまな展開を予定しています。私自身も商品のさらなる成長に向けてサポートしていけたらと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします!
T.I.
まずはVOXSPICEをここまで育ててくれた皆さま、そして活動を見守ってくれた皆さまに感謝申し上げます。この商品が一人でも多くの方の食生活を豊かにすることに貢献できれば、これ以上の喜びはありません。これまでも、これからも、変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。

取材日:2026年1月
内容、所属等は取材時のものです